映画『唐山大地震』はどんな映画?

映画『唐山大地震』は2010年に中国で公開され、当時の中国国内での興行収入歴代1位となった大ヒット映画です。この映画の監督はフォン・シャオガン。2008年に公開された彼の監督作品『狙った恋の落とし方。』で記録した当時の中国歴代興行収入1位の成績を、自身の次回作でさらに更新したのが今作です。

フォン・シャオガンは監督としては『女帝[エンペラー]』『戦場のレクイエム』なども有名ですが、2015年の中国におけるアカデミー賞の金馬奨にて最優秀主演男優賞を受賞するなど、俳優としても活躍している中国を代表する映画人です。

今作『唐山大地震』は中国国内では大ヒットしたにも関わらず、日本国内での知名度は高くありません。なぜなら、日本では2011年3月26日に公開される予定でしたが、東日本大震災の発生によって公開は2015年3月14日まで延期となってしまったためです。

タイトルの「唐山大地震」とは、1976年7月28日に中国の河北省唐山市にて発生したマグニチュード7.5、中国の公式発表によると約25万人が亡くなったとされている20世紀最大の被害を出した地震です。映画の冒頭には震災の被害の様子が生々しく描かれており、地震大国に住んでいる我々日本人にとっては目を背けたくなるようなシーンがいくつか含まれています。今作のDVDは映画の再生前に地震災害描写があることのエクスキューズが乗っていることが、今作の地震描写がどれだけリアルなのかを物語っていると言えるでしょう。

今作と同様に東日本大震災の影響を受けて上映に影響が出た映画に巨匠クリント・イーストウッド監督の『ヒア・アフター』があります。この作品の中に出てくる津波のシーンが大震災を連想させる、ということで公開期間の途中で上映を中止しました。

世界的な名監督の作品でさえ上映が中止になるほど、当時の日本人は映画などの災害描写に対してセンシティブになっていたため、今作『唐山大震災』はタイトルからして当時の日本では公開できる作品ではありませんでした。

映画における災害描写

映画における災害の描写にも様々な手法があり、徹底的にリアルな地獄絵図を表現するものや、人が死ぬなどの直接的な描写は避けるが甚大な被害が出ていることをそれとなく観客に分からせるものなど、作品のトーンやメッセージなどに合わせて監督はその手法を使い分けます。

徹底的にリアルなもので言えば、映画『アフターショック』が挙げられます(ちなみに『唐山大地震』の英語タイトルも『Aftershock』です)。新世代のホラー映画の名手イーライ・ロスが描いたチリの巨大地震の地獄絵図は、観客の倫理観をも揺さぶるほどの凄まじい残酷性を持っています。対照的に直接的な描写を避けたものとしては、映画『シン・ゴジラ』が挙げられるでしょう。

震災から5年しか経っていないこともあり、直接的に一般人が亡くなるという描写は避けてはいるものの、東日本大震災を思い起こさせる映像によってゴジラによる被害の大きさを表現しています。

これらの例で言えば、映画『唐山大地震』の災害描写は直接的なものと言えるでしょう。地震発生時には主人公ユェンニーの周りの人々は次々に瓦礫の下敷きになっていき、地震がおさまった後も、次々に運ばれる遺体や、瓦礫の下敷きになった人を助けるために足を切断する、という描写など、地震という災害の恐ろしさが直接的に伝わってきます。

映画『唐山大地震』は中国版『フォレスト・ガンプ』!?

冒頭の地震の場面は観客に大きなショックを与える場面ですが、それでも今作が中国国内で大ヒットしたのは、大災害を経験した主人公のファン一家(母親のユェンニーと双子の姉弟のドンとダー)がしっかりと立ち直り自分の力で未来を切り開いていく姿をしっかりと描いているためでしょう。

さらに、主人公たちの成長と合わせて、当時の中国が発展していく様子も並行して描かれていることも大ヒットの要因と言えます。

映画の主人公が生きている設定の当時の社会やニュースも描きながら主人公たちの成長も描いた映画に『フォレスト・ガンプ』が挙げられます。映画『フォレスト・ガンプ』も主人公がケネディ大統領と握手をしたり、ベトナム戦争のために徴兵されたり、など当時のアメリカを実際のニュース映像も使用して描いたことが話題となり大ヒットしました。

映画『唐山大地震』でも『フォレスト・ガンプ』と同様の手法を用いており、例えば1976年の毛沢東の葬儀の場面では、何万人もの人が天安門広場に集まった実際の映像を使用しています。

このように70年代以降の実際の中国社会と合わせて描くことで、中国人の観客たちにノスタルジックな感動も与えていると言えるでしょう。

地震を乗り越える主人公たちに感動!

それでは日本人では感動できない、というわけではありません。むしろ、地震大国に住んでいる我々を大いに勇気づける作品に今作はなっていると思います。

今作は映画の後半の2008年に四川大地震の様子も描かれます。冒頭の唐山大地震と対になる場面ですが、この自分たちの人生を狂わせることになった「震災」というものに対して、成長したドンとダーは危険を省みずに率先して救助活動を行い、そしてそのことによって自分が進むべき道を手繰り寄せることに成功するのです。

今作のラストにはエピローグとして、実際の唐山大地震で亡くなった人の名前が記された巨大な慰霊碑が登場し、震災で家族を失いながらも生き残った実際の生存者の方が慰霊碑の前を自転車で走るというシーンが出てきます。

カメラに収まりきらない慰霊碑の巨大さによって唐山大地震の被害の大きさがわかるとともに、それでも生き残った我々は前に進まなければならない、という強い意志が込められたシーンになっています。

絶望的な震災を経験しながらも、今作の主人公たちは強く自分たちの人生を歩んでいきます。東日本大震災を経験した我々だからこそ、今作から受け取るメッセージは大きいはずです。